山田一郎は、中学2年生。彼は学校では目立たない存在であり、クラスの中で孤立していた。毎日、学校に行くのが辛くてたまらなかった。クラスの誰もが彼を見下し、いじめのターゲットにしていたからだ。
いじめの中心人物は、クラスのリーダー的存在である佐藤健太だった。彼は体格が良く、クラスメイトたちの信頼も厚かったが、その裏では一郎を執拗にいじめていた。取り巻きたちと一緒に、一郎を笑い者にし、時には暴力を振るうこともあった。
ある日、教室での出来事だった。佐藤は一郎の机を蹴り飛ばし、中に入っていた教科書を床にばらまいた。クラスメイトたちはその光景に笑い声を上げた。
「なんだよ、これ。お前、これが勉強か？」佐藤は嘲笑を浮かべながら言った。
一郎は震える手で教科書を拾い集めたが、その手は怒りで震えていた。彼の中で何かが弾けそうになっていたが、これまでのように押し殺そうと必死だった。
「やめろよ、もう……」一郎はかすれた声で言ったが、佐藤たちは聞く耳を持たなかった。
その日の帰り道、一郎は雨に打たれながら歩いていた。空は暗く、雷鳴が響いていた。突然、激しい痛みが彼の体を貫いた。一郎は地面に崩れ落ち、意識を失った。
気がついた時、一郎は自分の体に異変を感じた。彼の指先から青白い光が放たれ、周囲に微かな電気の音が響いていた。一郎は驚きとともに、自分が何かに目覚めたことを理解した。
次の日、学校ではいつものように佐藤とその取り巻きが待ち構えていた。彼らは一郎を見るなり、またいつものように嘲笑を浮かべた。
「おい、一郎。また逃げるのか？」佐藤がニヤニヤしながら言った。
だが、この日は違った。一郎の中で何かが変わっていた。彼は静かに佐藤たちを見つめ、そして、ゆっくりと手を上げた。その瞬間、彼の指先から青白い閃光が放たれ、まるで雷が落ちたかのような轟音が響いた。閃光は佐藤に直撃し、彼は絶叫とともに後ろに吹き飛ばされた。
「う、うわあああ！」佐藤は床に倒れ込み、体が痙攣していた。彼の顔には驚愕と恐怖が混ざり合っていた。
「お前らも同じ目に遭いたいか？」一郎は静かに、しかし鋭い声で言い放った。
取り巻きたちは一瞬凍りついたように立ちすくんだが、次の瞬間には恐怖に駆られて逃げ出した。
「ま、待てよ！」取り巻きの一人が慌てて叫んだが、一郎は再び手を上げた。指先から放たれた電撃は、逃げる途中の彼を捕らえ、地面に叩きつけた。
「もう、俺に手を出すな。」一郎は再び言い放ち、その言葉は教室中に響き渡った。彼の声にはこれまでになかった威圧感があった。
佐藤は苦しげに息をしながら、一郎を見上げた。その目には、かつての威圧的な態度は影も形もなく、ただ恐怖と後悔が浮かんでいた。
一郎はゆっくりとその場を後にした。教室には静寂が訪れ、誰もが彼の背中を見つめるしかなかった。彼はこれまでの自分を完全に捨て去り、新たな力を手にしたのだ。もう二度と、弱い自分に戻るつもりはなかった。彼は今や雷を操る者となり、かつてのいじめられっこではなくなったのだ。
